story
東京都内を走る私鉄沿線。急行電車が止まら
ない小さな駅の銀杏並木が美しい商店街。そ
の中でもひときわ大きな銀杏の樹のそばに、
フランスの田舎造りの小さな喫茶店「フォン
ティーヌ」はあります。店を経営するのは寡
黙な父親と優しい娘。二人の人柄に惹かれて、
八百屋の放蕩息子、指輪止めの職人と弁当屋
の店員のカップル。フラメンコ教室の生徒た
ちなど、町内の常連客たちが毎日のように集
まって来ます。ある寒い冬の朝、プロのフラ
メンコダンサーを目指して上京して来たひと
りの少女。彼女の真っ直ぐで物怖じしない言
動が、それまで静かだった町にちょっとした
波紋を広げて行くことに……。場面を冬、春、
夏、秋の四つに分け、喫茶店の店内で起きた
1年間の出来事を優しく見守るように描いた
物語です。
episode
7年ぶりの再演でした。僕が演じる役は、出
ずっぱりにも関わらずほとんど喋らずに黙々
と仕事をしているという役です。芝居をして
るというよりは毎日劇場へ働きに言ってると
いう感じ。でもその生活しているという感覚
がとても気に入っている作品です。
cast
北原憲司/田窪一世
北原いずみ/古海裕子
鷺沼亮子/一木美名子
秋川絵里/岡野佐多子
松本千夏/神野恵子
春田紀子/児玉映里
冬木弘子/赤木美絵、志賀由美子
平岡雅彦/ナガセケイ
後藤太一/横田エイジ
柳原光雄/守田克彰
新谷早苗/山口智美
香川史郎/矢板大悟
飯島淑子/鶴屋紅子
staff
作・演出/田窪一世
装置/谷垣育子
照明/板谷静男
音響/水越佳一
舞台監督/上村利幸
舞台監督助手/原田恵子、高橋良子
撮影/田中健次
絵/小松修
review
▶︎初めて拝見しましたが、期待以上の面白さ
でした。ハート・ウォーミンングなストーリ
ーでかつ上質なお芝居というのは本当に得難
いものです。(いたずらに奇をてらったもの
ならいくらでもありますが)配役があまりに
もハマりすぎていて逆におかしいくらいでし
た。とにかく全体として、脚本、配役、照明、
音楽、装置などとても良い出来でした。(別
府浩一郎、41歳、会社員)
▶︎懐かしいシャンソンが流れるさまざまな人
々の人間模様。最近こんな素晴らしいお芝居
を見て心温まる思いで帰宅したことはありま
せんでした。不治の病を得た娘を不憫に思っ
た父親が、神様に向かって抗議する時の悲痛
な声に泣けました。この劇団の次回作がどう
いう風になっても、底に流れる温かさを失わ
ずにいてください。今後を期待しています。
(金子衣、79歳)