東京都内を走る私鉄沿線。急行電車が止まら
ない小さな駅の銀杏並木が美しい商店街。そ
の中でもひときわ大きな銀杏の樹のそばに、
フランスの田舎造りの小さな喫茶店「フォン
ティーヌ」はあります。店を経営するのは寡
黙な父親と優しい娘。二人の人柄に惹かれて、
八百屋の放蕩息子、指輪止めの職人と弁当屋
の店員のカップル。フラメンコ教室の生徒た
ちなど、町内の常連客たちが毎日のように集
まって来ます。ある寒い冬の朝、プロのフラ
メンコダンサーを目指して上京して来たひと
りの少女。彼女の真っ直ぐで物怖じしない言
動が、それまで静かだった町にちょっとした
波紋を広げて行くことに……。場面を冬、春、
夏、秋の四つに分け、喫茶店の店内で起きた
１年間の出来事を優しく見守るように描いた
物語です。

9年ぶりの再演でした。今回も舞台の上で実
際に珈琲を点て、キャベツを刻み、出来る限
りのリアルを目指しました。さらに四季を通
じての照明や音響効果にも可能な限りはこだ
わったつもりです。装置は前回のものがお気
に入りだったので変更を最小限に留めました
が、壁の色を劇場の灰青色に寄せて塗って貰
った結果、これ迄で最高の空気感が出せたよ
うに思います。俳優たちの演技も、これまで
以上にリアルにこだわって指導したところ、
お客様の反応が素晴らしく「没入感を感じた」
「リアルだった」「小松修さんの絵の世界に
今までで一番近いと感じた」等々、好意的な
ご感想をたくさん頂きました。僕個人として
は今後の方向性が見えたように感じています。

北原憲司/田窪一世
北原いずみ/原田愛A、南雲きえB
鷺沼亮子/吉永薫
後藤太一/豊島歩
松本千夏/鶴崎華A、真柴恵美B
秋川絵里/河合雪絵
春田紀子/小鳥遊唯A、逢川ともみB
冬木弘子/宮下愛蘭A、山川理愛B
平岡雅彦/丸山俊太A、小田島恵治B
柳原光雄/小田島恵治A、丸山俊太B
新谷早苗/河野まとい
香川史郎/峠乃参太郎
浅田マリー/鶴屋紅子

作・演出/田窪一世
装置/向井登子
照明/高円敦美
音響/中村光彩、近藤海人OP
舞台監督/本郷剛史、山本愛

撮影/中沢志保
絵/小松修